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(当ブログは、2024 年 4月 2 日にモロー・ソダリの北米ESGアドバイザリー・チームが発表した英文ブログの日本語訳です。)
欧州連合(EU)の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)は、企業のサステナビリティ報告の透明性、一貫性、標準化を高め、そして新しい欧州グリーンディールの一環としてサステナブル投資への資本誘導を支援することを目的としています。CSRDの対象となる企業は、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に従って「サステナビリティ報告書」を作成する必要があります。ESRSのセクター横断的な基準は、2023年7月に欧州委員会により採択されました。しかしセクター別基準や、中小企業向け、非EU親会社向け基準は、現在も策定中です。加えて現時点では、EU加盟国が指令の要求事項を国内法に移管する途上(2024年7月1日が期限)にあるため、報告書の提出期限や違反した場合の影響など、具体的な詳細事項も未確定です。
CSRDにより、EUのサステナビリティ報告義務対象となる企業数が大幅に増加すると予想されており、EUで事業を展開する米国企業も、最大3,000社が該当すると見込まれます。自社がCSRDの対象になるか否か、確認が必要です。
CSRDはサステナビリティ規制の新たなフロンティアであり、サステナビリティ報告の重要性が更に高くなります。対象企業には以下の事項が義務付けられます。
– 重要課題とそのインパクト・リスク・機会(IRO)を特定するダブルマテリアリティ(二重の重要性)評価を完了。
– ESRSに従って、データを収集し、上記重要課題とIROに関する年次サステナビリティ報告書を作成。
– マテリアリティ評価とサステナビリティ報告書について限定的保証を取得。
– 報告書(年次経営報告の一部を構成する場合もある)に電子タグを付し、該当するEU加盟国の規制当局に提出。
CSRD準拠に向けた重要なステップのひとつが、ダブルマテリアリティ(二重の重要性)評価です。これは、企業が人・社会・環境に与える影響(インパクト・マテリアリティ)と、財務的に影響を受けるリスクと機会(財務的マテリアリティ)の両方を特定するものです。
CSRDの具体的かつ詳細なガイダンスと要求事項を考えると、CSRDに準拠したダブルマテリアリティ評価は、今まで実施してきたマテリアリティ評価よりも複雑で厳格なものとなるでしょう。しかしながら、CSRD準拠のダブルマテリアリティ評価に費やされる追加的な労力とその詳細な分析レベルは、企業にとって、サステナビリティ報告要件への準拠を超えた、大きな価値を生み出す可能性を秘めています。CSRD準拠のダブルマテリアリティ評価から、企業のビジネス価値を高める方法をいくつかご紹介します。
デューデリジェンスとしてのマテリアリティ
CSRDのインパクト・マテリアリティ評価では、人・社会・環境に対する、実際のまたは潜在的な、プラスまたはマイナスの影響を、その深刻度(規模、範囲、修復不可能性など)と影響の発生可能性の次元にわたってスコア化する必要があります。ここまで詳しく調べると、企業が実際のデータに基づいて、潜在的な影響を特定・評価・監視・緩和するのに役立ちます。このデューデリジェンス作業はまた、企業が人々や社会、環境に与える可能性の高い深刻な影響(将来的に重大な財務的リスクとなる可能性のある影響)を最小化するのにも役立ちます。これは、現在EUで検討されているCSDDD(Corporate Sustainability Due Diligence Directive:企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令)など、世界中で新たに導入されつつあるデューデリジェンス要件とも適合します。
意思決定のためのデータ活用
今までのESGマテリアリティ評価とは異なり、CSRDの財務的マテリアリティ評価は、課題や「サステナビリティ事項」といったレベルよりも深く掘り下げて検討します。企業は、短期・中期・長期にわたる発生可能性と財務的影響度の大きさに基づいて、具体的なリスクと機会を特定し、評価しなければなりません。この種の分析は当然に、企業の標準的な財務計画・分析プロセスを補強するものです。多くの側面やステークホルダーの視点を結集することで、新たな財務リスクや機会に関して更なる洞察を得ることができる可能性すらあります。このような洞察は、リスク管理の強化、資本配分や予算編成の意思決定への情報提供、サステナビリティに対する取り組みの実行や投資に関する強力な事業計画の構築に活用することができます。
規制による報告と自主的情報開示との連携
ESRSの構成と内容の策定にあたり、EUは他の基準設定機関とも協力しました。その結果、グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)スタンダードや、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のSASB業種別スタンダードとかIFRS S1・S2を基に自主的情報開示を行っている企業は、ESRSが類似の(場合によっては同じ)データや情報を要求していることから、CSRD準拠に際して有利です。GRIスタンダード同様、包括的なESRSの課題に対応すれば、企業のサステナビリティ情報開示が法令順守を超えて強化され、投資家・顧客・ニュースメディアなどの主要なステークホルダーとのコミュニケーションに生かすことができます。
より詳細なデータによる深掘り
CSRDは、バリューチェーン全体(上流と下流双方の、ステークホルダー、活動、インパクト・リスク・機会など)を見渡し、場所(すべての操業地、子会社、重要な資産を有する場所など)と時間軸(短期、中期、長期など)ごとにマテリアリティを検討するよう企業に求めています。このマテリアリティ評価プロセスで求められるレベルまで細分化された分析をすれば、企業は詳細なデータを得て、戦略的洞察を深めることができます。例えば、地域別に分析することで、水関連のリスクや機会があるのは、自社施設の一部だけであることが判明するかもしれません。この場合、この洞察に基づいて水管理方針を調整し、節水努力をより効果的に行うことができます。
ダブルマテリアリティ評価の実施は、CSRD遵守に向けた重要な第一歩です。重要なサステナビリティ課題を特定すれば、企業はその洞察を以下の事項で活用することができます。
– 現在のサステナビリティ報告実務とESRS開示要求事項とのギャップの評価
– 特定されたギャップを埋めるための、方針の更新、データ基盤の整備、活動開始、目標設定
– 監査可能なデータ収集と報告のためのソフトウェアソリューションの配備
このような暫定的ステップを踏めば、適用される開示スケジュールにもよりますが、最終的なゴールであるCSRDサステナビリティ報告書の作成と提出がスムーズにできます。
始める準備はできていますか?
モロー・ソダリは、貴社がCSRDに準拠したダブルマテリアリティ評価を完遂し、そこで特定された洞察・結果を利用して、社内の活動を活性化するお手伝いをいたします。
原文はこちら
なお原文にある”DOWNLOAD NOW“をクリックしてフォームにご記入いただければ、当社のダブルマテリアリティ評価ガイド(英語)をダウンロードすることができます。