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Sodali & Co のプロキシの責任者でSenior Managing DirectorであるAndrew Thianは、「Mergermarket M&Aフォーラム ジャパン2025」のパネルディスカッションに参加し、地政学的不確実性、為替の変動、投資家の監視強化が進む中で、日本企業がクロスボーダーM&A(国境を越えた合併・買収)にどのように取り組んでいるのかについて見解を共有しました。
海外での買収活動が活発化する一方で、日本への投資も加速しており、企業、法律事務所、アドバイザリー会社、株主エンゲージメントの専門家たちが、日本のM&A活動における課題と戦略的優位性の両方について議論しました。
主なポイント
- 短期的なノイズではなく、長期戦略に注力
日本企業は、国内の人口動態の課題やバランスシート上の過剰な現金を背景に、海外での成長を追求する長期的なグローバル戦略に集中しています。米国の関税政策や中東情勢などのマクロ経済的・地政学的な混乱が不安定さをもたらしていますが、パネリストたちは、短期的な不安定さに過剰反応せず、緻密な計画と強固なビジネスケースを持ってM&Aを持続的に実行していくことの重要性を強調しました。 - 日本企業は「信頼される買い手」として認識されている
日本企業は、世界の市場において安定的かつ長期的な投資家として認識されています。現地経営陣への敬意、継続性、パートナーシップを重視する姿勢は、競争の激しい案件においても「好ましい入札者」として扱われる理由です。このような評判は、たとえスピードや金額でやや劣っていても、ディール獲得に寄与します。 - コミュニケーションとディールのタイムラインが鍵
文化的な障壁として、日本企業の慎重さや意思決定プロセスの遅さが、海外の売り手に誤解されることがあります。そのため、カウンターパーティーやアドバイザーとの早期コミュニケーションが重要であり、社内プロセスと外部の期待をうまく調整する必要があります。こうした透明性が、日本企業が競争力を維持しつつ、ガバナンス基準を守るための鍵になります。 - 文化的統合とシナジーの実現がPMIの中核
買収後の統合(PMI)においては、現地の自律性を尊重しながらも、シナジーの実現が求められます。日産や日本通運(NX)の代表者も登壇し、中央での監督と現場の独立性をどのようにバランスさせるかについて見解を述べました。明確なKPIの設定、統合優先事項の早期合意、取引成立前からのPMI計画策定が成功の鍵とされました。 - 株主アクティビズムの台頭とエンゲージメントの役割
日本ではアクティビスト投資家の活動が顕著に増加しており、経済産業省の新ガイドラインもこの傾向を後押ししています。彼らは非中核資産の売却、事業再編、資本効率の改善を求めており、企業はクロスボーダー取引を行う際、国内外の株主がその取引をどう評価するかを十分に考慮する必要があります。イベントドリブン型ファンドやパッシブファンドを含め、株主構成を把握することは、議決権の行使結果を予測・管理するうえでますます重要になっています。 - 日本へのインバウンド投資の加速
今回のセッションは主にアウトバウンドM&Aに焦点を当てていましたが、円安、日本の安定した法制度、ガバナンス改革を背景に、インバウンドM&Aも顕著に増加していると報告されました。海外投資家は日本の規制環境に対する信頼を深めており、PE(プライベート・エクイティ)ファンドは日本の中堅企業の分野でのプレゼンスを拡大しています。 - 柔軟なディールストラクチャー
不確実性の高い現代において、ディール構造はより柔軟になっています。表明保証、補償保険、MAC(重大な悪影響)条項などの機能的な条項が広く活用されており、リスク配分を効果的に行いながらバリュエーションのギャップを埋め、ディールの実現を可能にしています。 - M&Aの新たな形への挑戦
従来型の買収に加え、日本企業はマイノリティ出資、ジョイントベンチャー、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)など、多様なM&A形態を模索しています。これにより、戦略的適合性の検証、テクノロジーへのアクセス、グローバルなパートナーシップの構築が、全面的な統合リスクを負わずに可能になります。
このセッションからは、「クロスボーダーM&Aは日本企業にとって加速しているだけでなく、進化している」という明確なメッセージが浮かび上がりました。ディールメーカーたちは、複雑な環境の中で、より洗練されたツール、効果的な株主コミュニケーション、そして長期的価値創造への鋭い視点を持って取り組んでいます。
Sodali & Coは今後も、戦略的な株主アドバイザリーおよびエンゲージメントソリューションを通じて、すべての取引がステークホルダーの洞察に基づき、長期的成功を目指して実行されるよう支援していきます。
セッションの全編はこちらからご覧いただけます:[リンク]