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日本におけるサステナブルなサプライチェーンへの取り組み: 効率化と環境負荷の低減

2024年 8月 09日

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(当ブログは、2024 年 8月 5日にSodali & Coが発表した英文ブログの日本語訳です。)

グローバルな交易活動が進化する中、サステナビリティは今までのやり方に挑戦する、新たな課題と機会をもたらします。サステナブルな活動に目を向けると、グリーン物流とサステナブルなサプライチェーン・マネジメントに対する日本のアプローチは、貴重な教訓を与えてくれます。本稿では、グリーン物流、サステナブルなサプライチェーンへの取り組み、そしてスコープ3排出量把握の重要な側面と、日本の大手企業による模範的な事例に焦点を当て、このテーマを探求します。

グリーン物流の課題

グリーン物流は、輸送、倉庫保管、在庫管理などの物流活動が環境に与える影響を最小限に抑えることを目的としています。その考え方は簡単ですが、実行するには問題がいくつもあります。

グリーン物流への移行には通常、新技術やインフラへの多大な投資が必要となります。例えば、倉庫に電気自動車(EV)や再生可能エネルギー源を導入すれば、多額の初期費用がかかります。また、複数のステークホルダーが関与する日本のサプライチェーンは複雑で、グリーン・イニシアティブを統一的に調整し、導入・実施することは困難な場合が少なくありません。

環境規制や基準の更新に対応し続けることは、企業にとって大変なことです。規制・基準の遵守には継続的な監視と適応が必要であり、リソースを圧迫しかねません。さらに、サプライチェーンの最適化のためにAI、IoT、ブロックチェーンなどの先進技術を採用するには、既存のシステムとのシームレスな統合が必要であり、それは技術的に困難であったり、時間がかかる場合もあります。

こうした課題にもかかわらず、日本はグリーン物流で大きく前進しており、そのメリットが障害をはるかに上回ることを示しています。

サステナブルなサプライチェーンへの取り組みにおける商機

リスクと比べると商機は目に見えにくいものですが、長期的に見れば、サステナビリティへの取り組みはコスト削減につながることが少なくありません。倉庫のエネルギー効率向上、輸送ルートの最適化、廃棄物の削減は、運営コストの削減につながります。サステナビリティを優先する企業はブランド評価を高め、環境意識の高い消費者や投資家を惹きつけることができます。さらに、経産省のグリーン成長戦略は、グリーンな事業分野に取り組む企業に対して、税制優遇措置や再生可能エネルギープロジェクトへの補助金など、さまざまなインセンティブを提供しています。

スコープ3排出量の把握

温室効果ガスのスコープ3排出量は、企業のバリューチェーンから排出される間接的な全排出量であり、企業のカーボンフットプリントの大部分を占めます。スコープ3排出量の把握は、包括的なサステナビリティ戦略にとって極めて重要ですが、実際には課題に満ちあふれています。

複数のサプライヤーやパートナーからの正確なデータ収集は、標準化されていないことも多く、複雑な作業です。排出量データの信憑性を検証し、開示の透明性を確保することは容易ではありません。効率的なスコープ3排出量管理には、サプライチェーンにおけるすべてのステークホルダーの緊密な協力が必要であり、それには強力なコミュニケーションとパートナーシップ戦略が必要となります。

しかしこのような課題がある中で、強固なスコープ3排出量追跡システムの導入に成功している日本企業もあります。例えばトヨタ自動車は、サプライチェーン全体で広範なデータ収集の仕組みを確立し、排出量を効率的に監視・削減しています。この取り組みは、同社のサステナビリティ目標の達成に貢献する上に、業界のベンチマークにもなっています。

日本企業の事例

トヨタ自動車の環境チャレンジ2050は、製造・物流を含むライフサイクルにおけるGHG排出量をカーボンニュートラルにするという野心的な目標を打ち出しています。グリーン物流については、輸送における水素燃料電池トラックの活用、自社施設向けの再生可能エネルギーへの投資など、包括的なアプローチを採用しています。トヨタのサステナビリティへのコミットメントはサプライヤーにも及んでおり、サプライヤーが環境への影響を低減できるよう、厳格な基準とサポートシステムを設けています。

三菱電機はサステナビリティ戦略の一環として、サーキュラーエコノミーを重視しています。同社は、サプライチェーン全体で材料の再利用とリサイクルを推進し、廃棄物の削減とGHG排出量の低減に取り組んでいます。三菱電機は再生可能エネルギーとエネルギー効率の高い技術に投資しており、企業の環境に対する責任と収益性両立の好事例となっています。

パナソニックは、物流部門のサステナビリティを高めるために、いくつかの施策を実施しています。同社は、配送ルートの最適化、環境に優しい車両の活用、物流センターにおける再生可能エネルギーの利用促進により、物流におけるCO2排出量の削減に注力しています。同社はまた、サプライチェーンのあらゆる側面で環境負荷を考慮すべく、物流パートナーと連携しています。

日立製作所は、サステナブルなサプライチェーン・マネジメントについて包括的なアプローチを採用しています。同社の取り組みとして、サプライヤーに対する厳格な環境評価、エネルギー効率の促進、サプライチェーン全体にわたる廃棄物の削減などが挙げられます。日立のサステナビリティへのコミットメントは、その透明性の高い広範な開示情報に表れており、ステークホルダーは同社の進捗状況と課題に関して、確実に情報を得ることができます。

進むべき道

日本がサステナビリティに対する取り組みを継続的にリードしていけば、グリーン物流とサステナブルなサプライチェーンの未来は有望でしょう。この商機を生かし、課題を克服するためには、企業はサプライチェーンの透明性と効率性を高めるべく、AI、IoT、ブロックチェーンなどの先端技術への投資を含む総合的なアプローチを採用しなければなりません。バリューチェーン全体でサステナビリティへの取り組みを進めていくためには、サプライヤー、顧客、その他のステークホルダーとの強固な関係構築が不可欠です。

サステナビリティ経営は継続的なプロセスです。企業は、基準や期待の高度化に対応するために、自社の取り組みを継続的に監視、評価、改善しなければなりません。規制当局とのエンゲージメントにより、企業は規制の変化を先取りし、利用可能なインセンティブから利益を得ることができます。サステナビリティの重要性に関する消費者意識の向上に取り組めば、環境に優しい製品やサービスに対する需要を促進し、グリーン物流の事業計画を強化することができます。

サステナブルなサプライチェーンへの取り組みに見られる日本の歩みは、環境スチュワードシップとイノベーションに対するそのコミットメントの証です。このような大きな課題に取り組み、その機会を活用することで、日本企業は競争力を高めるだけでなく、すべての人々にとってのサステナブルな未来に貢献しているのです。

原文はこちら

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