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(当ブログは、2025 年 2月3日にSodali & Coが発表した英文ブログの日本語訳です。)
はじめに
カリフォルニア州で気候変動説明責任法案が最近成立し、規制の対象となる可能性のある企業は、遵守に向けて十分な準備を整えるために、もう行動を起こさなくてはならなくなりません。カリフォルニア州で「事業を行う」米国企業のうち、財務基準を概ね満たしている企業は、この規制の要件の対象となる可能性があることを念頭に、慎重な対応を取るべきです。カリフォルニア州における「事業活動」の正確な定義はまだ発表されていませんが、同州で事業を展開している企業は、準備を進める必要があります。
報告開始期限が間近に迫っているため、カリフォルニア州の気候変動規則の対象になることが予想される企業は、データ管理プロセスの監査、インベントリ境界の設定、温室効果ガスプロトコル(GHGプロトコル)に沿ったインベントリ計算、物質的な事業活動およびバリューチェーンのマッピング、気候変動リスク評価の実施の検討、第三者保証の取得など、準備を進める必要があります。これらの差し迫った要件に積極的に備えることで、規制強化の動きの中で、気候変動に関する説明責任に正面から取り組み、全社的な回復力と評判を高めることができるでしょう。
背景
カリフォルニア気候変動説明責任法案(California Climate Accountability Package)は、カリフォルニア州で事業を行う企業の透明性と説明責任を高めることを目的とした、一連のカリフォルニア州法パッケージです。この法案パッケージは、SB-253(企業気候データ説明責任法)とSB-261(気候関連財務リスク法)の2つの法案で構成されています。
SB-253:2025年より、スコープ1、2、3の排出量の公開を義務付け。
SB-261:2025年より、2年ごとの気候変動関連財務リスク報告書の提出を義務付け。
これらの法案は2023年9月12日に州議会で可決され、2023年10月7日にギャビン・ニューサム知事により、修正提案 付きで署名されました。2024年10月1日、気候変動説明責任法案の修正案(SB-219)が法律として署名されました。
要件
適格性
カリフォルニア州で事業を行う、米国を拠点とする企業・パートナーシップ・有限責任会社その他の事業体で、以下の基準を満たすものは、この法律に従う必要があります。
「カリフォルニア州で事業を行う」の正確な意味は、この法案パッケージの規則制定を担当する規制機関であるカリフォルニア州大気資源局(CARB)によって、まだ明確に定義されていません。この定義は、法案パッケージにより遵守の為の実務的事項の設定と規制採択をCARBに義務付けている期限の2025年7月1日までに明確化される見込みです。一般的に、この定義は以下のような事業をカバーすると考えられています。
・カリフォルニア州内で金融取引を行う。
・カリフォルニア州内で組織化しているか、または商業登記している。
・カリフォルニア州内の売上、資産、給与のいずれかが一定の基準値を超える。
この基準は、さまざまな業種の幅広い企業に適用されると予想されます。 自社が規制の対象となる可能性があると想定し、想定スケジュール(下記参照)に基づいて、必要に応じて法令遵守体制の確保をお勧めします。
データおよび開示要件
対象となる企業は、それぞれの法律により以下の開示要件に従う必要があります。
スケジュール
法令遵守への道筋
SB-253への対応準備
SB-253はスコープ1、2、3のGHG排出量の開示を義務付けており、うちスコープ1、2の開示は2026年から開始されます。スケジュールが迫っていることを踏まえ、企業にはまず自社の事業活動における排出源を特定し、スコープ1と2の排出量を定量化することが奨励されます。
1.組織境界の選択
SB-253では、排出インベントリをGHGプロトコルに整合させることが求められています。プロトコルの推奨に従い、企業はまず、自社のインベントリに最適な組織境界のアプローチを定義する必要があります。なお組織境界の選択にあたっては、報告が必要なスコープ3のカテゴリーに影響を与える可能性があることを念頭に置く必要があります。企業の構造、所有資産数と比べたリース資産の数、フランチャイズや合弁事業の有無などの要因が、最適な組織境界に影響を与えます。
2.データ管理
企業は、排出量を計算するために、事業全体および車両の燃料使用量を毎月追跡する必要があります。 情報を正確に収集、保存、報告するための体系的なデータ管理プロセスの開発は、インベントリプロセス全体にとって極めて重要です。 GHGインベントリに着手したばかりの企業にとっては、明確なデータ管理プロセスを導入し、データ管理者を特定することが必要不可欠な第一歩となります。 企業の構造や社内プロセスによって、(適切な)データ管理者は異なります。光熱費データを入手するのは通常、経理部門、施設管理者、または建物のオーナーです。このような手動のデータ管理に頼っている企業は、インベントリプロセスを開始するにあたり、必要な情報を入手するためにさまざまな部門と連携する必要があります。
一方、データ管理プラットフォームを利用し、各データ管理者から自動的に、または光熱費メーターから直接データがプラットフォームにアップロードされる場合、正確性を確保するための分析に集中できます。必要な情報がすべて入力され、評価された時点で、インベントリ計算の開始が可能になります。
3.インベントリ計算
GHGインベントリの計算は、独自に実施してもよいですが、カーボン会計ソフトウェアを利用することもできます。 ソフトウェアを使用して算出する場合には、それがGHGプロトコルに準拠しており、保証のためにも活用できることを確認する必要があります。 独自に算出する場合は、米国国内での事業活動による排出量を定量化するために、米国環境保護庁(EPA)から排出係数を入手する必要があります。また、国外での事業活動による排出量については、EIA(米国エネルギー情報局)などの国際的な情報源を利用することも考えられます。
算定後、企業は、GHGプロトコルの定めにより、さまざまな温室効果ガスの排出量を標準化した数値で表すべく、二酸化炭素換算値(CO2e)で排出量を報告しなければなりません。CO2eは、EPAから入手できる、各ガスの地球温暖化係数(GWP)に基づいて算出します。SB-253では完成した排出インベントリを、CARBが開発するデジタル報告プラットフォームに提出することが義務付けられています。
4.保証の準備
SB-253では2026年より、限定的保証レベルでの排出インベントリの保証も義務付けられる予定です。保証は第三者機関によって実施されますが、企業は、主要想定、推定、計算プロセスを詳細に説明するインベントリ管理計画を作成することで、検証プロセスを支援することができます。
SB 261への対応準備
SB-261により、2026年から気候関連の財務リスク報告の開示が義務付けられます。そのため、企業はTCFDに沿った気候リスク評価を実施する必要があります。このプロセスは、物質的な事業活動およびバリューチェーンのマッピングによる、将来の気候シナリオそれぞれの下で直面する物理的気候リスク評価の準備から始めることができます。移行リスクの評価には、将来のシナリオそれぞれにおける潜在的な市場、規制、技術、および評判の変化、ならびにビジネスチャンスの検討などがあります。企業はまた、自社の現在のリスク管理状況を評価し、現時点で気候リスクを想定すべき箇所、およびギャップが存在する箇所を特定することも検討すべきです。
気候リスク評価を通じて、気候変動の影響を最も受けやすい事業分野を特定し、それらのリスクを緩和し、また適応するための対策を実施することができます。気候リスク評価は規制要件を満たすだけでなく、自社の透明性を高め、投資家の期待に応えるのに役立ちますし、気候変動の重大な、金銭的なインパクトを定量化することで、財務報告とサステナビリティ開示の両面で情報を提供することができます。またこれにより、企業は移行関連のリスクへの備えを強化し、長期的な回復力を強化することにも繋がります。
まとめ
この法律に基づく報告期限が迫る中、法令順守の準備として必要な措置を講じることは極めて重要です。今現時点で、排出インベントリ開発のための強固な基盤を構築し、気候リスク評価を実施することは、今後さらに多くの州が独自の気候法案を制定すると予想される(イリノイ州やニューヨーク州の例でも明らか)中、法規制の状況変化に企業が対応する上で役立つと考えられます。
Sodali & Coの気候変動専門家チームは、気候リスク評価を実施し、データ準備と計算から保証に至るGHG排出量対応の全段階をサポートすることで、御社がカリフォルニア気候変動説明責任法案に適応するお手伝いをすることができます。 Sodali & Coがサポートとアドバイスを提供することで、お客様がこの法律による移行ストレスを緩和し、確実に法令遵守できるようになります。
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