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グリーンウォッシングを見破り、行動を起こす方法

2024年 10月 09日

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(当ブログは、2024 年 10月8日にSodali & Coが発表した英文ブログの日本語訳です。)

サステナビリティは、20年前には漠然とした倫理的な懸念に過ぎませんでしたが、今や、データ主導の戦略に基づいて社会や環境への影響を管理するための洗練された枠組みへと、劇的に進化しました。しかしこの成長に伴い、グリーンウォッシング、つまり企業のサステナビリティへの取り組みについて、誇張した、あるいは誤解を招くような主張も目立つようになってきました。誠実にサステナビリティに取り組む人々は、特にグリーンウォッシングの増加に落胆するでしょう。サステナビリティ担当部門は、ステークホルダーとの調整、サステナビリティ戦略の策定、市場の信頼の構築にたゆまず努力しています。しかしその影響力は往々にして不明瞭であり、特に、疑わしい主張を行う企業が高い評価を得ているように見える場合には、その傾向が顕著です。

この現実は、サステナビリティの専門家にとってフラストレーションのたまるものです。企業のサステナビリティへの取り組みが本物であるかどうか、どうすればわかるでしょうか? サステナビリティが企業の最優先課題であるとすれば、企業が約束を本当に果たしているかどうか、どのようにして確信できるでしょうか? 環境・社会・ガバナンス(ESG)の評価を向上させるよう経営陣からのプレッシャーが強まる中、環境へのインパクトに関する主張を実証することが難しい状況の下で、担当者は進捗を証明するよう求められているのです。

グリーンウォッシングとは?

グリーンウォッシングとは、環境または社会に対する責任に関するイメージを、裏付ける証拠なしに提示することを指します。 企業は、サステナビリティに関する実績を誇張したり、実際よりもインパクトがあるように見える、誤解を招くような表現を使用することがあります。 この行為は、いくつかの方法で現れます。 たとえば漠然とした、または誤解を招く主張には、「環境に優しい」「持続可能」「グリーン」といった言葉が、具体的な証拠無しに使われることが多く、これに明確な法的定義がないため、主観的な解釈に陥りがちです。もう一つの一般的な手法は、選択的開示です。つまり、実施や推進が容易な、環境への小規模な取り組みを強調する一方で、強いインパクトがある重要な取り組みを除外するような方法で、その取り組み全体について偏った認識を生み出しまかねません。さらに企業によっては、信頼性や厳格な基準を欠く未実証の認証やラベルに頼り、環境に関するその主張が、実際には未検証であるにもかかわらず、外部から検証を受けたと消費者やステークホルダーが誤解する事態を招いています。

サステナビリティ担当部門の状況

グリーンウォッシングは、短期的な利益追求が優先されがちな中で、インパクトの測定や部門の業績評価、それにサステナブルな影響を実際に会社にもたらすことなどが、サステナビリティ専任担当者にとっていかに難題であるか、ということを示しています。

サステナビリティに取り組む上で最も難しい課題は、自社の取り組みの直接的な効果を測定することでしょう。脱炭素化への取り組み、水資源保全プロジェクト、サプライチェーンの排出量削減などは、目に見える結果が出るまでに何年もかかることが多く、その影響を追跡するには膨大な量のデータが必要です。その間、グリーンウォッシング企業の派手な、しかし誤解を招きかねない主張に対抗できるような形で進捗状況を示すのは困難です。

また最低限の、または誤解を招くような環境面の成果によって企業が称賛されるような事態になれば、さらなる困難に直面します。真の長期プロジェクトに真剣に取り組んでいるサステナビリティ担当部門の士気を低下させることになりかねないからです。 サステナビリティへの取り組みに対する公の評価は、企業イメージの問題だけでなく、その取り組みを拡大するために必要な支援やリソースを確保するためにも極めて重要です。 しかし、グリーンウォッシングはこうした評価を複雑にし、外部のステークホルダーが真の取り組みと表面的な取り組みを見分けることを困難にします。

サステナビリティ担当部門は、ESGスコアやサステナビリティ・ランキングを短期間で向上させるよう、経営陣から大きなプレッシャーを受けている場合が少なくありません。このプレッシャーは、長期的なサステナビリティ戦略と短期的な成果を示す必要性との間に不調和を生み出す可能性があります。企業は、より困難ではあるが影響力のある長期的なプロジェクトを追求するよりも、規模は小さくとも早く結果が出るイニシアティブを優先せざるを得ないと感じるかもしれません。それでサステナビリティ担当部署のミッションが複雑になり、耳障りのよいマーケティング戦略に頼る誘惑が大きくなりがちです。

この問題に対して出来ること

グリーンウォッシングは今後も続くかもしれませんが、サステナビリティ専任担当者には、自らの取り組みが信頼性と影響力を維持できるよう、この問題に対抗する方法がいくつかあります。

透明性は、サステナビリティに対する信頼の基盤です。企業は、利用した方法論、進捗状況の評価基準、直面している課題などを含め、自社のサステナビリティへの取り組みについて明確で詳細な開示をコミットしなければなりません。課題は見過ごすべきではありません。なぜなら、それはステークホルダーの共感を呼ぶ傾向があるからです。過去にサステナビリティの障害を乗り越えた事例を示すことは、成功の連続を羅列するよりも説得力があります。サステナビリティ目標に関する定期的な情報更新と、挫折に関する誠実なコミュニケーションは、信頼性を高めるために役立ちます。あいまいな表現に頼るのではなく、自社にとってサステナビリティとは何か、また進捗状況をどのように測定しているのか、企業は明確に定義しなければなりません

第三者機関による認証と検証は、企業のサステナビリティに関する主張に信頼性を付加する、重要な要素です。カーボントラスト、B Corp、Science-Based Targets initiative (SBTi) など、多くの機関が厳格な評価を必要とする認証を提供しています。 もちろんコストはかさみますが、そのメリットはコストを上回ります。 これらの検証があれば、その企業のサステナビリティの達成度が測定可能でり、かつグローバルな基準に沿ったものであることを示すことができるからです。 さらに、CSRD のような強制的規制では保証が求められることも多く、このような第三者認証・検証・保証の導入をできるだけ早く検討することが、シンプルにビジネス上望ましいといえます。

サステナビリティへの取り組みについて独立監査を受けることは、環境対策に関する主張に対する疑念を払拭するのに役立ちます。このような保証はステークホルダーとの信頼構築に役立ちますし、グリーンウォッシングだという非難に対する防御としても価値があります。当社の2023年の記事「グリーンウォッシングー知っておくべきリスクと規制」(英語)が強調しているように、規制当局の監視が厳しくなる中、企業にとって、その主張をデータと検証済みの保証で裏付けることがますます重要になっています。

信頼を構築し、グリーンウォッシングに対抗する最も効果的な方法のひとつは、投資家、顧客、従業員、さらには地域社会のグループなど、幅広いステークホルダーをサステナビリティに関する議論に参加させることでしょう。企業の経営陣は、自社のサステナビリティ・プログラムに精通していると仮定すると、非常に大きな影響力を持っています。企業がステークホルダーとの継続的な対話を積極的に進めれば、透明性へのコミットメントをアピールし、貴重なフィードバックを受け、より野心的なサステナビリティ・プロジェクトへの支持を集めることができます。企業は、懸念に対して受け身で対処するのではなく、サステナビリティに関する自社独自のストーリーを展開することができるのです。

グリーンウォッシングの主張が更に厄介になるのは、野心的な目標やコミットメントが公表される場合です。「カーボンニュートラルを実現する」といった曖昧なコミットメントは証明が難しく、説得力に欠けるため、明確なスケジュールを伴う、測定可能な具体的な目標で裏付ける必要があります。COP26で発表された大胆な主張の中にも、明確なスケジュールを示してもなお、首尾一貫した戦略を欠いたものがありました。企業は具体的なサステナビリティ目標を設定することで、その進捗状況を効果的に追跡し、主張の正当性を示すことができます。その目標は、温室効果ガス(GHG)排出量、エネルギー使用量、水消費量、サプライチェーンへの影響など、信頼性の高い指標と関連付いていなければなりません。「排出量の削減を目指します」と言うのと、「2019年を基準として、2030年までにスコープ1および2の排出量を40%削減する計画です」と言うのとでは、どちらがよりインパクトがあるでしょうか。明確な戦略に基づく明確な指標と期限があれば、サステナビリティへのコミットメントが測定可能かつ防御可能になります。

まとめると、グリーンウォッシングは、企業の真のサステナビリティ実現を阻む大きな障害であり続ける可能性は高いでしょう。サステナビリティ専任担当者がこの問題に立ち向かうためには、透明性、第三者機関による検証、ステークホルダー・エンゲージメント、目標設定に対する、確固たる決意が求められます。怪しい主張を展開する企業が称賛を受けるのを見るのは落胆させられますが、真のインパクトに集中し続ければ、サステナビリティ担当部門は組織を有意義な環境的進歩へと導くことができます。結局、グリーンウォッシングを回避することの重要性を認識し、真正面から取り組む企業こそが、ステークホルダーとの重要な信頼関係を強化し、プラスのインパクトを永続的に生み出すことができるでしょう。

原文はこちら

 

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