menu
ホームページarrow_rightインサイトarrow_rightレポート

社債権者特定の重要な役割

2024年 5月 17日

このページでは、皆様が最新情報を入手し、新たな刺激を受け、また乗り遅れないようお手伝いしています。

Eメールで登録 chevron_right

サブスクライブ

close

Eメールで登録

(当ブログは、2024 年 4月 23日にモロー・ソダリのグローバル債券部門が発表した英文ブログの日本語訳です。)

社債市場は過去40年間、重要な資金調達源として発展してきました。2022年の世界の債券市場は総額133兆ドルに達しました。51兆ドル超を占める米国は、世界最大の債券市場です1

社債権者を理解することは、発行体にとって極めて重要です。企業やその財務・法務アドバイザーは、効果的な債務再編計画を立てるために、そして債券要項の変更承認を得たり、債券の買い戻しや交換戦略を正しく行うために、さらに債券投資家とのIRを改善するために、あるいは規制遵守のために、投資家と積極的にコミュニケーションを取る必要がある場合があります。

社債発行体は社債権者の身元を把握しているでしょうか?

一般的には、否です。社債権者に関する公開情報は、社債権者のごく一部しかカバーしておらず、また情報が古い場合もあります。すべての社債権者の利益を代表するために任命されたトラスティー(社債管理者に相当)も、社債権者の情報を把握しているわけではありません。たとえ企業が発行時の社債購入投資家リストを持っていたとしても、流動性があれば速やかに売買できるので、社債権者情報はすぐに陳腐化する可能性があります。発行頻度の低い発行体にとっては、この問題はさらに深刻です。

社債権者を特定する上での課題

投資家の特定には多くの課題があります。発行体から社債権者への情報開示要請は強制的ではありません。さらに、債券発行体と投資家を隔てる証券保管・管理の連鎖は長く、複雑です。所有権の連鎖は、債券を預託している決済システム、例えば米国の場合だとDepository Trust & Clearing Corporation(以下「DTCC」)から始まります。DTCCは、債券を保管するカストディアン銀行の預託機関としての役割を果たしています。次いでそのカストディアン銀行の顧客は、債券の最終受益者とは限らず、仲介業者という立場である場合もあるのです。

社債権者を適切に特定する方法

社債権者特定作業には、通常10営業日ほどかかります。モロー・ソダリの社債権者調査は、社債権者特定代理人として、補足率を最大化するために広範な流通経路を通じて開示要請を送付する公開的方法を採ることもできますし、または発行体が社債権者特定作業の実施を機関投資家のファンドマネジャーなどに知られたくない場合には、水面下で実施する方法を採ることもできます。どちらの方法を選択するかは、発行体の最終的な目標次第です。

今日のダイナミックな市場環境においては、投資家とのコミュニケーションは最重要課題です。投資家と積極的にコミュニケーションすれば、透明性が向上し、ステークホルダーとの関係が強化され、最終的には長期的な成功に繋がります。

企業が社債権者を知ることが不可欠な理由

負債管理取引(買入消却・交換募集・同意勧誘など)の観点から見た戦略的・実務的目的

発行体と社債権者との交渉においては、交渉相手を理解するために、社債権者を特定することが不可欠です。社債権者調査は、投資家層の要件(例えば、個人投資家と機関投資家ではニーズや要件が異なる可能性がある)や、そのニーズが発行体のニーズとどのように相互作用する可能性があるか、ということを担当部門が理解し、今後の取引の中核戦略策定に役立ちます。

社債権者特定報告書は、法務部門が投資家層の状況に対応した文書を作成する際にも役立ちます。社債権者の居住地や社債保有能力は、発行体がオファーできる取引の種類に影響します。法務部門が社債権者の居住地を把握していれば、当地の規制当局に承認を求めることもできます。

金融商品取引業者は、投資家とその連絡方法が分かっていれば、取引開始前に投資家と連絡を取ることができます。彼らは、その取引に対する応募見込み状況をチェックし、正式なローンチに先立って、応募が想定・計画上の基準値に達すると見込まれるかどうかを確認することができるのです。

実務的目的について見ると、社債権者を特定すれば、オファー資料を適切な人に迅速に届けることができます。資料を代理人からカストディアン、仲介業者、受益者に直接送付できるので、彼らはオファーをすぐに分析可能になる訳です。所有権の連鎖には多くの階層があるため、(社債権者が特定されていないと)取引の受益投資家に緊急の連絡を取ろうとしても、そのメッセージが締切前に意思決定者に届かない可能性があるのです。

さらに、社債権者報告書は、発行体やそのアドバイザーが、通常カストディア ン銀行名でのみ受領する依頼書を、実際の投資家と照合するのに役立つ場合もあります。これにより、まだ動いていない投資家へのフォローアップが可能になります。

IR(投資家対応)の改善

社債権者の積極的な特定は、IR強化に繋がります。発行体は、投資家の懸念に対応し、問い合わせに答え、社債権者と建設的な対話を行うことで、投資家と発行体の関係全体を強化することができます。

社債権者と良好な関係を構築・維持していけば、企業全体の市場評価も向上します。高い評判を得ることができれば、有利な借入条件や将来の社債発行に対する需要の増加にも繋がるのです。

まとめると、社債権者の特定は社債発行会社にとって極めて重要です。その様々な理由、利点、課題を理解すれば、企業はその知識を財務上の関係改善に役立てることができます。社債権者特定のための、十分な情報に基づいた積極的なアプローチは、負債調達の目標達成に役立つのです。

1出典 世界経済フォーラム、2023年4月

原文はこちら

サブスクライブ

close

Eメールで登録