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M&Aの進行:ステークホルダーの力学がディールの結果をどう左右するか

2025年 7月 09日

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Sodali & Coのプロキシ部門のManaging DirectorであるDanny Huntは、2025年のMergermarket M&Aフォーラム ジャパンに登壇し、「M&Aの進行:投資家と議決権行使助言会社に対する取締役会の積極的な関与がいかに成果を左右するか」というテーマでセッションをしました。ここでは、あらゆる取引の中でも最も重要な最終段階である「株主承認の獲得」について、貴重なインサイトが提供されました。豊富なクロスボーダー案件の経験とそれら実際の事例に基づいた議論から、株主に早期にエンゲージメントを行い理解を得ることがひとつの選択肢」ではなく最早「必須事項」であることが強調されました。 

主なポイント 

  1. 株主の行動は複雑かつ動的
    M&Aの発表後、対象企業の株主構成には急速な変化が生じます。イベントドリブン型のファンド(ヘッジファンドやアービトラージファンドなど)は大きなポジションを構築し、TOB(株式公開買付)や株主投票の結果に影響を与える可能性があります。一方で、アクティブ運用の投資家は保有株を減らすことがあり、ブラックロックやバンガードのようなパッシブファンドは引き続き株主として残りつつも、株主総会での議決権行使を通じて積極的に関与します。こうした各投資家タイプごとの行動を理解することは、ディールの計画と実行において極めて重要になります。
  2. 議決権行使助言会社の役割が拡大
    ISSGlass Lewisといった議決権行使助言会社は、大手機関投資家やパッシブファンドに対して引き続き強い影響力を持っています。彼らはTOBについての意見は出しませんが、スクイーズアウト(少数株主排除)や株主総会における投票においては、その推奨が結果を大きく左右します。特にパッシブファンドの保有比率が高い場合、ポジティブな推奨は重要な意味を持ちます。
  3. 日本におけるアクティビズムの急増
    過去10年間で、日本で活動するアクティビスト投資家の数は約10倍に増加しました。彼らはより高度化・国際化しており、その要求も単なるガバナンス改革から、M&Aの促進、非中核資産の売却、取締役会の説明責任強化など、より複雑で多岐にわたる内容へと進化しています。取締役会は、こうしたエンゲージメントを想定し、強固なガバナンス体制と明確なメッセージの準備が求められます。
  4. 規制ガイドラインによる要求水準が上昇
    経済産業省による新たなガイドラインでは、取締役会に対し、買収提案の評価において透明性と公平性を示すことが求められています。機関投資家は、独立委員会の設置や意思決定の明確な根拠説明を期待しており、取締役も株主と直接対話し、提案されたM&Aがすべての株主にとって最善である理由を説明することが求められています。
  5. 個人株主の存在も重要
    個人投資家は、発行済株式の20%以上を保有することが多いにもかかわらず、企業行動への関与は限定的です。TOBのように票差が拮抗するケースでは、彼らの参加がディールの成否を分けることがあります。この層に向けた効果的なコミュニケーション戦略が不可欠です。
  6. 準備が最善の防御策
    対立的なディール、アクティビストキャンペーン、株主提案など、どのような局面においても「準備」が成功の鍵です。企業は以下を徹底する必要があります:
  • 株主名簿を常時マッピングして常にモニタリングする 
  • 各ステークホルダーに対する事前のエンゲージメントプランを構築する 
  • トリガーイベントに備えた内部対応チームを設置する 
  • 議決権行使助言会社の方針や機関投資家の期待を把握する 
  • 明確かつ一貫した対話によりストーリーを浸透させる 
  1. ストーリーテリングがカギを握る
    取締役会がアクティビストに対抗する際、ディールを支援する際、あるいは買収提案に対応する際、「どのように語るか」が結果を左右します。言葉選びは重要です。「敵対的買収」から「同意なき買収(unsolicited)」への表現の転換は、今日の投資家環境において「トーン」「透明性」「立ち位置」がますます重視されていることを示しています。

セッション全編はこちらからご視聴いただけます:[リンク] 

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